【一般篇】
本田透『なぜケータイ小説は売れるのか』(ソフトバンク新書)
最後の最後でいつもの本田ルサンチマン節が出てくるが、逆に言うとそこまでは出てこない。割と冷静にざーっと概略を説明しているので、「ケータイ小説回りがどうなってるのか」を知るにはちょうどよさそうな一冊。
木全賢『デザインにひそむ〈美しさ〉の法則』(ソフトバンク新書)
工業デザインの基本を説明した本。非常に平易な書き方をしているので、僕のように普通の人でも楽しめる。が、ヲくんのようにある程度デザインに手を染めている人が読むとまた別の見方があるんだろうなあ。
藤原和博・宮台真司『人生の教科書 [よのなかのルール]』(ちくま文庫)
説明されている内容よりも、むしろ「伝えようとする理由」そして「伝え方」に興味が沸いた。
若い世代にとって情報を得るルートがこれだけ複線化している今、上の世代が「自分が正しい」と思うことを「伝える」というのは、以前に比べて物凄く難しくなっている。いや、昔から覚悟がいることには違いないんだけど、今は容易に別の考えを探してこれてしまうわけで。
想人も6月で5歳。なかなか会えない中でどう向き合っていこうか。
岡田斗司夫『オタクはすでに死んでいる』(新潮新書)
コーリンの待ち時間に40分ほどで立ち読み。
さらっと読める内容の割に興味深い内容。「昔は良かった、今の若者は……」という愚痴交じりではあるんだけど(本人もおそらく自覚している)、それでも「創造者→消費者」という世代論はなんとなく共感。
もっとも、ニコ動などを見る限りは、「創造者」は今でもいる。けど、昔に比べてスタンスが変わってきたような気もする。「スタートするのに壁が高い」「フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーション」の中で創造してきたオタク第一世代と、「ネットなどの影響で壁が低くなった(技術的な壁の高さは変わってなくても、何かを発表するにあたっての心理的な壁は格段に低くなった。ニコ動の「~してみた」という表現は的を射ていると思う)」「ネット経由、勝手連的な」オタク第三世代。
クイズ界になぞらえても似たような話ができそうだけど、長くなるので略。ひとついえるのは、30前後の「創造者」たちが続々一区切りをつけているこの時期、次の世代はどうするんだろうなあ、ということ。
世界地図探求会『世界の奇妙な国境線』(角川SSC新書)
暇つぶしと問題作成にはいいんだけど、新書っていうか文庫サイズの雑学本レベルの内容。
ポール・R・シーリィ『あなたもいままでの10倍速く本が読める』(フォレスト出版)
中島孝志『インテリジェンス読書術―年3000冊読破する私の方法』(講談社+α新書)
割と似通ったことを書いているので、これは二冊まとめて。
シーリィ氏のフォトリーディングは最近試しています。「1秒1ページで読む」魔法のような技術……というのは正直眉唾なんですが、ただ、本に対するスタンスを変える、という意味では、読む意味がある一冊だったなあ、と。
中島氏の方は、「本をなぜ読むのか」「この本を読んで何を得るのか」という目的意識、という点。これはシーリィ氏の方でも触れられているんですが、中島氏の方がより明確ですね。
自分なりに解釈すると。
・「本はじっくり精読しなければならない」とは限らない。もちろんそういう本もある(小説とか)んだけど、仕事関係とかざっと情報を仕入れたい本については、「1冊を3時間」よりも「3冊を、1時間ずつで飛ばし読み」する方がメリットがある。
・また、「1冊を3時間」かけて最初から最後まで読み通すよりも、「1時間ずつ飛ばし読みして、それを複数回繰り返す」方が頭に残りやすい場合もある。少なくとも、じっくり読んでも読み返さないと記憶にはなかなか残らない。
・「最初から最後まで、一字一句読み逃すことなく、追っていかなければならない」というのは小学生時代からの思い込み。必ずしも一字一句読まなくても、概略がつかめればいい。飛ばし読みに罪悪感を感じる必要はない(これは目から鱗。つい「コンプリート欲」を充たすことを考えるんだよね)。
・「読書すること自体が楽しい、かっこいい、暇つぶしになる」という「目的としての読書」もいい。けど、情報を入手して何かの行動に結びつける、成し遂げるという観点からすれば、「手段としての読書」もある。読書とは、「自分で体験する」「人と直接会う」「テレビ、新聞、雑誌、ネット」などと並列の、「情報を得るための手段」なわけで。その本の内容とかそのときのニーズに合わせて、自分の中で使い分けられればいいなあ。
アシモフ・著、星新一・編訳『アシモフの雑学コレクション』(新潮文庫)
すでにいろんな人が問題の元ネタにしてそうだなあ。
しかしアシモフ、小説の他にも科学史やら唐沢俊一のような雑学本やら。多才な人だなあ。
高橋克徳・河合太介・永田稔・渡部幹『不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか』(講談社現代新書)
成果主義から一転、再び「会社という名の大家族」制度に戻ろうとしている最近の風潮(三井物産が寮制度を再導入したり、サイバーエージェントがファミリー制を全面に出したり)。その風潮と背景が大まかにわかった点ではよい。ただ、これだけ働く側の意識も立場もバラバラになった今、具体策をどうするかは物凄く大変だよなあ。その点については読者一人一人がそれぞれの状況で考えるしかないんだろうけど。
山本紀夫『ジャガイモのきた道-文明・飢饉・戦争』(岩波新書)
北海道行ったときに食べたジャガイモは本当に美味しかったです。ジャガイモの上にイカの塩辛が乗っているという、別に北海道名物でもなんでもないその店の創作メニュー(炙屋だったかな)なんですが、忘れえぬ味の一つ。
アンデス山脈や青森などの寒冷地で作られているという貯蔵用イモ(冷凍→解凍を繰り返してスポンジ状にし、脱水して感想)が気になる。
【仕事篇】
鈴木貴博『アマゾンのロングテールは、二度笑う』(講談社)
昔クイズフェスティバルで何度かお手合わせしたことがある方。
戦略論の基本と最近のビジネストピックスをうまく組み合わせて説明されており、非常にわかりやすい。気軽に読める一方で「深さ」はないが、興味があるトピックスは別の本で深掘りしていけばいいわけで。
ただ、「アマゾン」について興味があってこの本をつかんだ人からすると……全体の1/8で「ロングテール」について軽く触れている程度なので、かなり拍子抜けかも。そういう意味では、手にとらせる意味ではいいタイトルにしても、本の内容&リピーター獲得という点ではどうなんだろうなあ、このタイトル。
【小説篇】
どれもそれぞれ良かったです。興味のある方はご一読を。
☆ベルンハルト・シュリンク『朗読者』(新潮クレスト・ブックス)
数年前のベストセラー。クイズでもよく聞いたな。映画化もされたんだっけ……と思ったらまだ進行中らしい。主演は二コール・キッドマンが懐妊で降板、ケイト・ウィンストレットとのこと。
うん、良かったです。皆様にも一読をお勧めします。
凄くドラマチックなわけでも、凄く意外なわけでもない。「ヒロインの秘密が云々」という書評をよく見かけましたが、一番重要な秘密については、タイトルがタイトルだしねえ。
でも、読み終えた後にいろいろ考えさせます。舞台背景となった戦争や、ストーリー自体の主人公・ヒロインの行動云々よりも、「他人」や「現在」「過去」についての自分の関わり方は如何、と。恋愛をテーマにしつつも、恋愛以外のもう少し生き方の「芯」の部分を考えさせられる、そんな小説でした。
ところで、話の筋自体はわりとシンプルで、ファンタジー世界に換骨奪胎したらそれこそラノベでありそうな気がします。ファンタジー世界を舞台にした、年上の女性との恋(Hシーンも適度にあり)、でも彼女には秘められた過去があって……とか。
☆舞城王太郎『阿修羅ガール』(新潮文庫)
☆舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる』(講談社)
15ページくらい読んでみて、合わない人はとことん合わない、合う人はとことんはまる、そんな典型。
僕は後者。とりあえず全部読もう。
「ストーリーが破綻」などという批評も見かけましたが、ストーリーで読ませる作家じゃなかろうに。
☆牧薩次『完全恋愛』(マガジンハウス)
この物語最大のオチはかなりわかりやすい。
わざわざそのシーンの前後に真相を匂わせるような描写があるし、そのシーン自体の描写も見え見えなくらい。また、個々の事件の解決にしても「なんだかなあ」という感じは残る(特に第三の事件。唐突すぎる……)。ミステリーとしてはあまり「やられた」という感じは受けなかった。この人の「中の人」の他の作品と比較しても。
ただ、それでも話の展開の巧さと、キャラクターの血の通わせ方はさすが「中の人」。ラストシーン、完全に読めてたにもかかわらずそれでも面白かったです。
☆青柳青『ヒポクラテス・クラブ』(新風舎文庫)
なんせ知り合い(なんどか顔を合わせたレベルにせよ)が書いた小説だし、しかもクイズ研を舞台にしてるし……ということで、逆に手がなかなか延びなかった一冊。ところが読んでみるとこれが面白い。「内輪ネタ」の部分もあるにはあるんですが、それを除いても十二分に面白い。
各登場人物に対してやや説明不足(説明文がどうこう、という意味ではなく、各場面での行動やエピソードによって「あ、こういう人なんだな」という人物像が立ち上がる……点がまだ少し弱い感)とか、状況説明がすんなり頭に入りにくい点があったりするんですが、それでも次回作は期待、と。
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