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2008年4月28日 (月)

【感想・本】4月読んだ本(小説篇)

伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』(祥伝社ノン・ノベル)
☆伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』(東京創元社)

 要注意!
 『陽気なギャングが地球を回す』シリーズは続篇として『~日常と襲撃』が出てるんだけど、思いっきり前作のネタバレをしているので、『~地球を回す』から読むことをお勧めしますよ、と。そのおかげで少し楽しめなかったのは残念。
 『アヒルと鴨のコインロッカー』。よくこれ映画化したな!伊坂作品の「複数の章が最後に収束する」「倒叙的な要素」「作中の薀蓄」を見ると、つい昔読んだ辻真先を思い浮かべます。

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乙一『失はれる物語』(角川書店)

 xyzで問題出してるのに、そういえばまだ読んだことなかった乙一。これが初。
 「Calling you」「傷」は映画化するほどの作品か、という気がする。アヒルと鴨のコインロッカーとは全く別の意味で、よくこれ映画化したな、というかする気になったな、という気が。
 それよりも収録作の「失はれる物語」「しあわせは子猫のかたち」あたりの方が好み。世が世なら「世にも奇妙な物語」でドラマ化されそう。

 ここで一問。vitaの飲み会で出したら一匹狼゛さんが正解。

 Q.作家・乙一の作品集『失はれる物語』からの問題です。
 この作品集に収録されているのは、以前は別の形で発表されたものです。
 それに関して、作者の乙一は、「(A)という形式から(B)の形式に作り直した本書の存在は、私にとってある種の敗北である。(A)のままでは手にとってもらえない客層がいるという、当然の事実を覆せなかったという証明だ。」とあとがきで書いています。
 (A)に入る言葉は何?(Bは「Aではない」くらいの意味なので、答えなくても結構です)
 
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綾辻行人『どんどん橋、落ちた』(講談社文庫)

 初・綾辻だったんだけど、トリック・ストーリーともに特に新味とか個性は感じず。
 
 んで、おそらく「これってミステリー内外の事情知ってる人にとっては、内輪としては面白いんだろうなあ」という内輪ネタや皮肉ネタがあるんだけど、うーん、正直興味を惹かれない。

 よくクイズイベントでも「内輪は悪い」って批判がある。でも、内輪ネタ大好き(クイズに限らず。それこそ往年の「夢で逢えたら」とか)の僕は、それはちょっと違うと思っている。
 「輪の中に入ろう、と思わせられない」=「外から見て魅力がない」ことが問題なんじゃないかな。

 内輪ネタを使っていても、「輪の中に入ろう」と思わせるような求心力を持つ作品も、顧客を満足させることはできる。もっとも、それだけターゲットは狭くなり、熱狂的に支持する顧客がいる一方で拒絶する人もいるだろう。また、内輪ネタを使わない作品よりも、「面白さ」に対する観客のハードルは確実に高くなる。面白くなければ「輪に入ろう」とせず、逆にその輪を疎んじることになるわけで。
 だから、「内輪は難しい」。「けど、使いようによっては武器になる」というのが、今の僕のスタンスかな。

 ともあれ、この作品については、あんまり「輪の中に入ろう」という気にはならんかったです。

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西尾維新『きみとぼくの壊れた世界』 (講談社ノベルス)
 
 これまた初・西尾維新。
 「殺人事件」というミステリーの形はとっているが、多分作者にとっても読者にとっても、さらにいえば文中のキャラクターにとってもどうでもいい、という稀有な小説。

 「同級生女子1:好意の裏返しで、もって回ったしゃべり方をする保健室登校児。Eカップ(と自分からわざわざ言う)」
 「同級生女子2:スポーツ少女。喧嘩しながらも友達、と思いきや主人公に告白」
 「妹:ブラコン。やや内気」
 「男性友人:剣道部のスポーツマン。友達思いのいいやつ」

 脱力するくらいいかにもなキャラクター設計に、文中にわざわざ出てくる選択肢(主人公もくどいくらい「選択」「選択」と繰り返す)、その手のゲームにはありがちな、けど小説で読むとたまらなく読後感の悪い「えんでぃんぐ」(確かに「壊れて」いる!)。

 西尾維新は初めて読むが、こういうスタイルが好きでやっているというよりは、「わざと」やってるように写る。正しい意味での「確信犯」ではなく、よく使われる誤用の方での「確信犯」。「読者の皆さんは、いかにもこういったギャルゲーっぽいのが好きなんでしょ?」と、半ば露悪的に打ち出したような感じ。
 そんなこんなので、「ギャルゲー臭」(おそらく「ラノベっぽさ」とも別、なんだろう)についてはそんなに気にならなかった。
 いかにも内気な進学校の男子に受けそうな(ちなみにこのサイトで「進学校の男子」とはホメ言葉でもなんでもない)長口上、いかにもな名前は、多分西尾作品に共通するんだろうけど。

 しかし、そのわざと選んだ「スタイル」にまぶして、作者が結局言いたかったこと……おぼろげながら伝わるけど、どうにもこうにも「薄い」「浅い」ように移るんだよなあ。いや、「薄い」「浅い」のが青春だしあらゆる人に共通の悩み、というのもその通りなんだけど。


 5月は少しインプットのペースを落とす予定。読むとしたら舞城王太郎あたりかな。

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